「北はすでに核弾頭を小型化した」元CIA東アジア部長 (1/3ページ)
平成20年9月30日 23:09 産経新聞 金正日総書記の健康状態が注目される中、北朝鮮は寧辺の核関連施設の再稼働に向けた動きを加速させている。米中央情報局(CIA)の元東アジア部長で、約20年にわたり北朝鮮分析を担当したアーサー・ブラウン氏(57)は産経新聞と会見し、「金正日氏は元の執務状態には戻れない」とする一方、「北朝鮮はすでに核弾頭の小型化に成功している」と述べ、強い懸念を表明した。一問一答は次の通り。(久保田るり子、犬塚陽介)
−−金正日総書記の病状は
「深刻な脳卒中で左側にマヒが残った。手術をやったかどうかはわからない。ある報告は『やった』とあり、別の報告は『やっていない』とある。北朝鮮は中国に連絡し中国は北朝鮮に医者を送ったが、1日か2日かかったため、病状が悪化した。元の執務状態には戻れない。しかしダメージの程度は不明だ。5人の中国人医師と2人のフランス人医師が担当した。6カ月は危ない状況が続く」
−−米国は「ポスト金正日」についてどう、分析しているか
「まだ『ポスト金正日』という段階ではない。80%の回復で彼が(執権を)続けるかもしれない。皆、(各国とも)同じようなことを考えている。もし彼(金総書記)が死亡したらどうなるのか。3人の息子の一人が継ぐのか、集団指導体制になるのか、(第4夫人といわれる)金玉氏や義弟の張成沢氏が実権を握るのか。いずれにしても実際にはわからない。向こうがまだ、決めていないからだ。分析は推測だ」
−−「ポスト金正日」で北朝鮮が改革開放に向かう可能性は?
「金総書記が生きている間に改革開放はない。むしろ強硬になるだろう。自信を持って表に出せる後継者がいない段階で解放政策には向かわないだろう」
−−金総書記の健康問題で北朝鮮の核管理の不透明に懸念が高まっているが
「金総書記が生きているか死んでいるかとは関係なく、(CIAは北朝鮮による)核拡散があると考えている。長期的な計画として(北朝鮮が核兵器を売却することは)あると考えている」
−−米ブッシュ政権の6カ国協議についての評価は
「結果は出ない。北朝鮮は核を放棄するつもりは全くないからだ。6カ国協議は幻想だ。(6カ国協議が)始まる前から情報当局はそのように考えていた。政府(ホワイトハウス)がどう考えていたかは私には言えないが、1950年代からの北朝鮮の核開発の歴史をみれば金正日総書記が核爆弾を捨てる意志も証拠もない」
−−CIAは核実験(2006年10月)を予測していた?
「私は2005年5月に『1年以内に核実験を行う』との分析を発表した。4カ月間違ったが(笑)。なぜなら、核の歴史、彼らの言葉から(実験は)自然な流れだった。金正日総書記は異常な男ではない」
−−核実験を阻止する政策はなかった?
「止められなかった。金正日総書記は大きなテーブル(核保有国による核クラブ)に着くことを望んだ。われわれが『ウエルカム』といえば核実験はしなかっただろう。しかし、われわれの答えは『申し訳ないがノーだ』。そして米国に軍事オプションはない。この件で彼に他の脅しも懐柔も通用しない。なぜなら、『核なしの北朝鮮』はアフリカの開発途上国と同じであり、金総書記の目的はただひとつ、核クラブに入ることなのだ」
−−核実験後、米ブッシュ政権の対北政策は変わった。直接対話に応じ、北朝鮮に譲歩を重ねた。別の政策はなかった?
「米国はアフガニスタン、イラク、ロシア、さまざまな問題を抱え、私が議会で北朝鮮問題を報告するのは一週間に多くても5分間だった」
−−CIAは2度目の核実験を予想していた?
「予想はあった」
−−再度の核実験を警戒し北朝鮮に譲歩したという観測もあったが。
「正しい。われわれが何もしなかったら、彼らはまた実験を行ったと思う」
−−現在、北朝鮮は核計画申告・検証問題で米国がテロ支援国家指定解除を行わなかったことの報復として再処理施設の再稼働などの動きをみせている。北朝鮮の目的をどうみる?
「彼らは寧辺の核施設をわれわれに2回売った。一度目はクリントン政権の枠組み合意、2度目は6カ国協議のエネルギー支援だ。今の動きは米次期政権と“3回目の商売”を考えてのことだろう。新しい米国大統領との取引の方が、いい商売になると考えていると思う」
−−2、3週間以内に寧辺の核施設は再稼働する?
「寧辺の3つの施設、つまり実験用原子炉、プルトニウムを抽出する再処理施設、化学工場のうち、再処理工場は3−4週間で稼働が可能だ。すでに稼働準備は始まっているから、1−2週間以内に稼働できる。ただ、米大統領選の期日とのタイミングを計る可能性もある。再処理工場を動かせば3〜4週間で使用済み核燃料棒約4000本から8キロぐらいのプルトニウムを抽出することができる」 −−北朝鮮の核兵器の能力は?
「2006年の実験は1キロトン以下だったが、成功だった。インドやパキスタンも同様の小型化の実験をやっている。中距離ミサイル『ノドン』(射程1000−1300キロ)に搭載可能な核弾頭を完成した可能性が高い。われわれは深刻な問題を抱えている。特に日本、韓国は現実を直視すべきだ。私はこの問題を日米が真剣に話し合うべきだと思う。リスクが高いのは日本なのだ。『あなた(米国)は、北朝鮮の核保有をどう考えているのか』と。クリントン前政権もブッシュ政権も答えをだすことはできなかった。しかし、北朝鮮の核問題より日米関係の方が重要だと思うからだ」
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アーサー・ブラウン氏。米中央情報局に25年在籍。アジア各国の支局長などを経て東アジア部長(2003−2005)としてブッシュ大統領に北朝鮮情勢を直接報告。1996年から主に北朝鮮分析を担当。現在、アジアの危険地域分析を行う「ミッドサイト・コンサルティング」最高責任者。
テーマ : 北朝鮮問題 - ジャンル : 政治・経済